成田に噂の名店を訪ねる 2003年1月
以前からちらほらと投稿があって、千葉県成田においしいジンギス屋があるらしいとは認識していた。昨年秋頃にまたも投稿があり、北海道生まれの投稿者の一押しのジンギス屋だという。成田空港のあたりも羊肉度が高い様子で、調べてみるとそれもそのはず、成田空港が位置するところはかつて御料牧場だったのだという。皇室の食材をまかなう御料牧場は、明治の始めに三里塚に設けられ、成田空港建設のため昭和44年に栃木県塩谷郡高根沢町に移転するまで牧畜や畜産加工などを行っていたという。もちろん綿羊も飼われていたわけで、その名残が羊肉屋さんでも不思議はない。
これはゼヒとも確かめに行かねばなるまい。固い決意のもと、私最高顧問は千葉県成田市へと車を走らせた。都内から京葉道路、東関東自動車道を通って成田IC下車。三里塚方面に進むと、目当てのお店はあった。
「野沢羊肉店」。名前の通り羊肉屋であり、羊肉販売のかたわらジンギスカン食堂を営んでいるという風情である。のれんをくぐって入ったその中は、がらんとした殺風景な田舎の食堂。真ん中に穴の空いたテーブルが6つほど並んでいる。中ほどには石油ストーブ。おばちゃんが片隅で七輪用の炭をおこしているところだった。
壁に貼られたメニューを見ると、ジンギスカン一人前1000円(170g)、野菜一皿600円、ラムチョップ2人前2500円とある。なかなかいい値段ではないか。ややひるみながらもジンギスカン4人前、野菜2皿を注文。この日は家族(大人二人+子供3人)と長女の友人(小2)の計6人という陣容だったのだ。
おばさんが七輪をテーブルへと運んでくる。その上には穴あきナベ。表面がつるっとした一風変わったナベである。肉と野菜の皿も運ばれてくる。
さっそく野菜・肉をナベに投入。
ジュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!
子らに回すのももどかしく口に放り込む。んまい! ふくよかな羊のかほりを残すいいお肉だ。たれは醤油ベースの自家製だれ。濃くもなくさっぱりしすぎてもいず、なかなかいい勝負をしている。お肉を追加してたっぷりと食べた。
気がつくと来たときにはウチの家族で貸し切り状態だったのが、地元のなじみ客らしきグループが残りのテーブルを埋め始めている。そちらのナベからもじゅじゅ〜〜と白煙が上がり、店内の煙はけっこうな濃密度となっていた。真冬にもかかわらず窓は全開状態だ。
立地といい値段といい、もしや国産羊では? と思い帰り際おばさんに聞いてみたが、オーストラリア産とのこと。しかしジンギスカン以外にはニンニク焼きくらいしかメニューにない直球勝負ぶりには喝采を送りたいと思う。
羊肉販売の方ではジンギスカン(100g/タレ付き)、ラムチョップ(100g)がともに380円となっていた。店内に貼ってあったビラによると、小売り販売は36年目になるという。
地元客に愛される、地に足をつけた感じのジンギス屋「野沢羊肉店」。心地よい満腹感にひたりながら車で後にしつつ千葉県成田市市民は幸せよのう・・・と呟かずにはいられなかった。(記/最高顧問 霜野)
暴挙? 快挙? 三軒茶屋に新店オープン! 2003年2月
今年は未年である。
羊といえば当然ジンギスカン。
北海道新聞などは未年の記念企画としてジンギスカンにスポットをあてた特集を組み、なぜか我が東京ジンギス倶楽部にまで取材を敢行するという暴挙にまででた。
ならば今年は全国的に「ジンギスカン」がブームになってもおかしくはない。話題性は充分。
「ジンギスカン? あぁ、あの牛肉の肉が羊になったやつね。おれ匂いがダメなんだよね。」
などという輩がいまだにいるが、そのような人に私は声を大にして叫びたい。
「甘い!!」
焼き肉だと注文しようとメニューを開いたとたんそのメニューの多さに心は千々に乱れ、ロースとカルビをどのくらいの割合で頼もうか。タン塩は上にしようか並にしようか。キムチは当然頼むとしてナムルはどうする。
ホルモンは……、レバーは……、サンチュでくるむと美味いんだけどな……、でも予算が……、などとあれこれ悩んで脂汗を流し、家族で行けば子供は「お腹が空いた」とぐずりだし、「お父さんのようにウジウジした人になっちゃダメよ」と女房に蔑まれる。
デートで行けば彼女に「この人って優柔不断だったのね。」と思われるんじゃないか、「本当は器の小さい人間なのね」と嫌われるんじゃないかとパニックに陥る。
ところがジンギスカンは「ジンギスカンセット!」と頼めば肉と野菜がバランスよく付いてくる。
悩むこと一切なし。まさに単純明快、喜色満面、一家団欒、一同笑顔。
女房には「さすがお父さん!」と褒められ、子供は学校の作文に「僕の尊敬する人はお父さんです。」と書くだろう。
デートだったら「この人って男らしい人なのね。頼もしい人なのね。」となり、大成功間違いなし。
しかも一人前はセットでもだいたい1000円から高くても1500円以内。
羊肉は牛や豚などのどの肉よりも美容と健康にも優れている。
このデフレ不況の長引く日本に、まさにぴったりの食べ物である。
時は来たれり!
今年こそ「ジンギスカン」を北海道以外でもメジャーな食べ物にするチャンスだ!!
ブームを起こすための当HPの責任も重大である。
そんなブームの予兆を感じてか、昨年の12月、三軒茶屋に新しく生ラムのジンギスカン専門店がオープンした。
掲示板で情報は得ていたものの、年末の忙しさにかまけてなかなか行くことができなかったのだが、今年を「ジンギスメジャー化元年」と位置づける東ジンとしては、どんな店なのか早急に調査してみないといけない。
そこで2月初旬、総裁のlamuo男爵と男爵の幼なじみの三人で下見にでかけた。
三軒茶屋の駅から歩くこと10分ちょっと。
商店街も途切れ、住宅街にさしかかり、本当にこんなところにジンギスカン専門店があるのかと疑い始めたころ「ジンギスカン専門」と書かれた明るい看板が見えてきた。
店の名前は『寅々』。
なぜ羊なのに名前が寅なのかという疑問が頭をよぎる。
店はビルの半地下にあり、高級そうなたたずまいのおしゃれな作りだ。
店内に入ると時間は7時を過ぎているというのにお客が一人もいない。
店内は12人が掛けられる長いカウンターと、4人掛けのテーブルが3つ。
カウンターのテーブルには穴が開いていて、そこに七輪が入れられるようになっている。
我々はテーブル席についた。
メニューをみるとジンギスカンセット(ロース肉と野菜。野菜はタマネギと長ねぎのみ)1300円。
追加ロース肉900円。ヒレ肉1000円。
野菜盛り合わせ(ニンジン、カボチャ、長ねぎ、タマネギ、もやし)500円。
きのこ盛り合わせ700円。
塩焼き用のロース900円、ヒレ1000円。
その他におつまみ系のちょっとした小皿料理や、変わったところでは豚汁の豚肉をラム肉に替えたラム汁というものもある。
ビールは中生が500円。日本酒やワインもそろっている。時節柄かノンアルコールビールというのもあった。
まずはジンギスカンセットと生ビールを注文する。
テーブルの真ん中に開いた穴に炭の入った七輪がセットされ、ジンギス鍋が置かれる。
ジンギス鍋は溝に穴が開いたタイプ。
ビールが運ばれてきた。ノドも適度に渇いているのでここでグーッと飲みたいところだけれどまだ我慢。
ジンギスカンセットが登場。
セットの肉はロースで、厚さは2ミリ弱。
赤い肉と白い脂身のコントラストがじつにきれいだ。
肉にツヤがあり、食欲をそそる。
野菜はタマネギと長ねぎのみ。もやしがないのがやや残念だ。
鍋にラードをまんべんなく塗る。
十分に熱くなった鍋からモウモウと白い煙が立ち上る。
鍋の周りに野菜を敷き詰め、開いた頭頂部に肉を投入。
ジューーーーーー!!
という幸せの音と共に生ラム特有のちょっと甘くて香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
裏表と肉の表面を軽く焼き、中はレアな状態でタレにからませまずは一口。
最近は肉が上等すぎるせいか肉として美味しいものの、羊特有の香りが全く感じない生ラムも増えているが、ここの肉は肉としての美味しさもありつつ、噛めばラム特有の甘い香りもほんのりと通り過ぎ、十分に美味い。
肉を飲み込むと口中に香るラムの香りもスッと消えて、鼻に付くことがない。
タレはこのラムの香りを殺さないようにだろうか、じつにあっさりとした、味は違うがチリ鍋におけるポン酢のように、あくまでも主役を生かす重要なわき役といった風情のたたずまいで、肉がいくらでも食べられそうだ。
薬味にはニンニクと一味とうがらしが付いている。
ニンニクを入れるとまた美味しさもアップするだろうが、この後仕事で打ち合わせがある会長は一味だけで我慢。
ここでビールをグーっと飲む。
今までのご無沙汰を謝るかのように口径内の隅々にまでビールが広がり、口中に広がったラムの脂を洗い流しながらノドを通り、胃へと流れていく。
ビールを通っていくごとにノドが、食道が順番に喜びの雄叫びをあげている。
あっという間に最初の肉はなくなり、追加でヒレ肉を2人前注文する。
ヒレはかなり厚み(1センチくらい)のあるカットで登場。
それも表面だけを焼き、タレに浸けてパクリ。
ラムの香りはその脂身に多く含まれていると今まで思っていたのだが、どういうわけか全く脂身のないヒレの方がラムの香りが強く感じられる。
厚みがあるために変に柔らか過ぎず、適度な噛みごたえがある。
肉を噛むときに、肉からの適度な弾力が奥歯に伝わり、その心地良い抵抗に奥歯が喜んでいる。
ただ味の好みでいえば、脂身のあるロースの方が好きな味だ。
やはりジンギスカンにはもやしが欲しくなる。
もやしはないのかとお店の人に尋ねると、野菜盛り合わせに入っているけれどもやしだけの注文もできるというので、もやしだけを注文した。300円。
ジンギスカンとともに食べるもやしが、もやしの食べ方の中でいちばん美味しいんじゃないだろうか。
ヒレもなくなり、さらにロースを2人前追加。
食べ比べた結果、やはりロースの方が好きだという意見で3人が一致した。
ラム汁というものも注文してみた。
みそ味で野菜などもたくさん入っていて、まさに豚汁だ。
ただ、豚肉がラム肉に変わっているものの、それほどラムの感じはしなかった。
豚汁といわれればそのまま信用してしまいそう。
話題作りにはいい一品というところか。
塩味も試してみたかったが、お腹もいっぱいになってきたことだし、それはまた後日。
総合評価としては肉は大変満足のいくものだった。
セットの野菜がタマネギと長ねぎだけというのは何か意図したところがあるのかもしれないが、もやしなども入れて欲しい。
タレも肉のうま味を打ち消さないあっさり味でグッド。
セットで1300円というのは場所柄いたしかたないところか。
ただ、欲をいえばもう少しボリュームがあれば良いのだが、女性が食べる量としては十分なんだろうが男性にはちょっと物足りない。
店の雰囲気は洒落ていて、従業員の服装も白いユニフォームで気持ちがいい。
よくある居酒屋風の店構えとは一線を画した作り。
ジンギスカンなんて気取って食うもんじゃないや! という方もいるだろうが、
いろいろな形態のジンギスカン屋さんがあったほうが面白い。
(食べるときは煙がモウモウの紙エプロン姿と、気取ってなんか食べられないんだけどね)
たまたまこの店のオーナーがいたのでお話を伺ったところ、
この店は30代のちょっと大人の女性に来て欲しいというコンセプトで作ったとのこと。
そのために内装もおしゃれにして、女性が一人でも入りやすい雰囲気を心がけているのだとか。
炭火を使っているけれど一人のお客様も大歓迎とのこと。これはありがたい。
この店をオープンするにあたっては、都内のジンギスカン屋さんをいろいろと食べ歩き、その際当HPのジンギス情報も参考にしたとのこと。
肉には一番こだわって、食べ歩いた結果ここという問屋に決めたということだった。
我々が行ったときには帰り際にお客がもう一組来ただけだったが、なんとか繁盛して末長く続いて欲しい店だ。
数日後、会長の好きな大阪の女性アカペラグループの、東京ライブのあとのオフ会にこの店を利用したときには、日曜日だというのにけっこう繁盛していて安心した。
ただ使う七輪が増えると、ラードを鍋に乗せたときに煙が店内に充満して目の前が真っ白になるくらい。半地下だからしょうがないのかもしれないが、もう少し換気がうまくいってくれると、髪の毛や服にもそんなに匂いが付かないのではないか、という一緒に行った30台の女性たちの意見も合わせて記しておこう。
「ジーコ」を訪ねて会長慟哭、立川の夜 2003年3月
我々東京ジンギス倶楽部のメンバーは全員サッカー好きである(最高顧問はサッカーというよりも日本代表好きなのだが)。特に会長は年間100試合以上の試合を観るという(主にテレビ中継だが)サッカー好きで、「サッカー命」といっても過言ではない。
そんな我々の掲示板に去年の秋、立川に『ジーコ』というジンギスカン専門店があるという書き込みが寄せられた。
『ジーコ』といえば誰もが思い浮かぶのが現サッカー日本代表監督で“サッカーの神様”とも呼ばれているブラジルのスーパースター「ZICO」。本名アルトゥール・アントゥネス・コインブラ。
もしかしたらこの店のオーナーがサッカー好きで、店名を“サッカーの神様”ジーコの名前をとって店名にしたのではないか。店にはサッカー選手の写真やブラジルのユニフォームとかが飾ってあるかも……。などと想像は膨らみ、ぜひ一度訪れてみなくてはと思っていた。
しかし、立川という場所はあまり馴染みがないうえに遠いという印象があって、なかなか行くきっかけがつかめなかった。
2002年7月に日本代表監督に就任し船出したジーコジャパンは、その年、ジャマイカとアルゼンチンを相手に1敗1分け。
年が明けた2003年3月に初勝利を目指してウルグアイ代表との親善試合を行うことになった。
となれば我々も心から応援しなくてはいけない。景気付けの意味も込めて3月某日、日本代表監督と同じ名前をもつ立川の『ジーコ』で初勝利祈願を行おうと足を運んだのであった。
というわけで今回は会長、最高顧問、総裁と東ジン幹部がひさびさ全員集合。3人で立川駅南口に下り立った。
しかし、3人とも正確に『ジーコ』の場所を知らず、交番で聞き、通りの商店街のおじさんに聞きして、どうにか店を発見。時間は夜8時を回っていた。
店内に入ると席はすべてカウンターで12人も入ればいっぱいになってしまうだろうか。カウンターの中ではきびきびと働く女性が二人。先客はジンギスカンを食べているアベックとなぜかカレーを食べている男性二人連れの4人。
残念なことに店内には期待したサッカー関連グッズやポスターなどはなかった。
そのかわりといっては何だが、「備長炭使用の店」という看板が輝いている。
メニューを見るとジンギスカンは生ラム700円、上生ラム750円、ラムロール650円、スペアリブ1本300円、ラムカルビ800円となっている。野菜はもやし、タマネギ、ピーマン、長ねぎ、まいたけが各300円。セットというのはない。生ラムとラムロールの両方を食べられる店というのが東陽町の「カムイ亭」しかなかったのでこれは嬉しい。
まずは生ラム、上生ラム、ラムカルビを2人前づつ、それにスペアリブを3本注文。野菜は盛り合わせもあるというのでそれを注文した。ところが残念なことに、今日はラムカルビが品切れだとのこと。これにはちょっとガッカリ。
今回、会長がこの店に向かうにあたって決めていたコンセプトは「北海道人のように」。
北海道の人はジンギスカンを食事のおかずとして食べるとよく聞く。ところが会長は今までジンギスカンといえばビールということで、ご飯のおかずとして食べたことがなかった。北海道の郷土料理といっても過言ではないこのジンギスカンを、北海道人と同じように食べたことがないのでは、真にジンギスカンを知っているとは言えないのではないか。ご飯のおかずとしての美味しさも知らなければ片手落ちではないか。
というわけで、ジンギスカンとともに会長だけ早くもビールのほかにライスも注文する。
ジンギスカンの用意ができるあいだ、3人でビールで乾杯。
目の前に七輪が置かれ、その上にジン鍋がセットされた。ジン鍋は穴明きタイプ。
炭は真ん中に穴が開いている成形炭だったので、備長炭の粉を固めた成形炭なのだろう。
肉と野菜も運ばれ、準備万端。肉は色つやもよく、とても美味しそう。上ラムの方がやや赤味が強いかという感じ以外、見た目はあまり分からない。1人前は120gだそうだ。
タレを舐めてみると甘味と酸味が程よく溶け合い、ほのかにシナモンの香りがする。
ラードを鍋のてっぺんに置く。白い煙とともにラードがジワーッと溶けていく。ラードの焼ける匂いも心地よく、頃やよしとまずは上ラムを乗せる。
ジュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
耳に美味しそうに響くいつもの幸せの音。
表面だけ焼いたミディアムレアな状態でタレをつけてパクリ。
んまい!
適度に弾力のある噛み心地、噛むほどに肉汁があふれ出しとてもジューシー。ただ、羊の香りはほとんど感じられない。
次に普通のラムを焼いて食べてみる。
これまた
んまい!
ただ、上ラムとの差があまり感じられない。値段も50円しか違わないように、味もほとんど変わらないような気がする。ほかの二人にも聞いてみたが、味の違いがよく分からないという意見だった。しいていえば、生ラムのほうが多少羊の香りが強い様な気がする。
今日の会長は何が何でもご飯とジンギスカン!
お店の人に「ご飯をお願いします」と再度催促して、何気なく壁を見ると、なんとそこに「味付けジンギスカン 750円」という張り紙が……。
ご飯のおかずならばタレつけジンギスよりも味付けジンギスの方があっているはず。やや甘めのタレが染み込んだご飯もまた美味いはずだ。
頭のスイッチがカチッと「ご飯でジンギスカン」から「ご飯で味付けジンギスカン」に切り替わった。
さっそく最高顧問と総裁に味付けジンギスも注文しようと提案した。壁のメニューを見た最高顧問は「生もロールも味付けもあるなんて…。この店は俺の理想に近い。」と感心する。
「でも、味付けは鍋が汚れるから生を食べ終わるまでダメ。会長もそれまでご飯は我慢しなよ。」
というので、迷った揚げ句、味付けのタレが染み込んだご飯の誘惑に逆らえず、しぶしぶ承諾した。お店の人にもご飯を持ってきてもらうのをちょっと待ってもらう。
生ラムの次にロール肉を注文。冷凍技術の進歩でロールラムも昔のような鼻につく臭さがなく、羊の良い香りだけが鼻腔を通りすぎる。
ロールラム好きの総裁は「やっぱりジンギスカンはこれだな。」とつぶやきながら焼けた肉を次から次へと口に運ぶ。
しかし、会長の頭は「ご飯で味付けジンギスカン」でいっぱいになっていて、ロールラムの味どころではない。
これを食べたらいよいよ味付けに突入とワクワクしていたら、突然お店の人がカウンターから出てきて壁の「味付けジンギスカン 750円」の張り紙をはがし始めた。
びっくりする会長。
「す・すみません。そ・そ・そのメニューは……」
気が動転してついどもりながらが聞くと
「ごめんなさい、今品切れになっちゃったんです」
申し訳なさそうにお店の人が謝った。
Shock !!!
最高顧問の「鍋が汚れる」の一言で今日のコンセプトがガラガラと音を立てて崩れていった。
味付けの甘辛いタレの味と共にワシワシとご飯をかっこむ夢が……
肉とご飯を口いっぱいに頬ばり、口径内の隅々にまでジンギスの味満たす夢が……
北海道人の食生活を体験するという夢が……。
「思いたったが吉日」という言葉はまさに真理。
「すみません・・・・ご飯ください」
力なくご飯を注文する。
タレをつけた肉とともに食べたご飯の味は、ちょっとしょっぱい涙の味がした。
スペアリブはまさにラムチョップ。
炭火で焼くと適度に油が落ち、骨に張り付いた肉を歯でこそげながら食べると、なんともワイルドで美味い。
食べ終わってお店の人に話を聞いてみた。
まず何はともあれ『ジーコ』の名前の由来から。
●オーナーの名前が「こうじ」というので、昔から愛称として「ジーコ」と呼ばれていて、それを店名にした。サッカーとは一切関係がない。(かなりガッカリ)
●オーナーが北海道出身だったので、それまでクラブをやっていたのだが、美味しいジンギスカンが食べたくて自ら始めてしまった。最初はクラブをやっていたところで営業していたのだが(この店のHPはまだその時の場所になっている)、ジンギスカン専門店としては広すぎるのでここに越してきた。
●最初は生ラムだけだったけど北海道出身のお客さんが多く、懐かしいロールラムも食べさせてくれというリクエストが多くてロールラムを置くようになった。(これはかなり嬉しい)
●味付けジンギスカンのタレは付けダレをそのまま漬けダレとして作っている。(食べてみたかった!)
●肉は札幌の『さっぽろジンギスカン』に肉を卸している業者と知り合いで、そこから仕入れている。(美味いのも納得)
ということであった。
値段も手ごろ、肉も美味しく、最高顧問と総裁はとても満足して店を出た。
たった一人後ろ髪を引かれる思いの会長……。
「この店が池袋辺りにあったら毎週のように通うんだけど」と最高顧問。
総裁も「ロールラムと生ラム両方食べられるのが良い」と満腹のお腹をさすりながらつぶやく。
立川という場所柄我々はおいそれとは行くことができないが、繁盛して欲しい店である。
あぁ、それにしても味付けジンギスカン+ご飯ワシワシの夢が…………。
「いつかはリベンジを!」
そっと心に誓う会長であった。
都心一等地にロール肉のいいお店オープン 2003年4月
フジテレビの代表的なテレビドラマといえば「北の国から」。残念ながら昨年でドラマは終了してしまったが、珠玉の名作といっていいドラマである。
東京ジンギス倶楽部幹部連中はこのドラマが大好きで、とくに総裁の黒板五郎の物まねはまさに絶品。我々はずいぶん笑わせてもらったものである。
そんな名作ドラマ「北の国から」と同じ名前のジンギスカン専門店が赤坂にオープンしたと東ジンの掲示板に書き込まれたのが昨年夏。
肉は成形ロールラムで2500円で90分間食べ放題。もう1000円追加すると飲み放題にもなるという情報であった。
これはぜひ行かなければと思いつつ、腰の重い東ジン幹部連中。お互いのスケジュールもなかなか合わず、そうこうしているうちに2003年の未年を迎えてしまった。
その間に掲示板には東ジン訪問の常連さんたちからの「今まで食べた成形ロールラムでは一番上手い」「オーナーの人柄が良い」などの賛辞の書き込みが相次いだ。
こうなったら今年に入り「寅々」「ジーコ」と訪問した我々の次のターゲットは当然「北の国から」。4月某日、会長・最高顧問・総裁は地下鉄の赤坂駅に集合する約束を取り交わした。
しかし、前日になって総裁が仕事の都合でドタキャン。
当日は最高顧問が大幅に遅刻するという連絡が入り、とりあえず会長一人で乗り込むことになった。
「北の国から」の場所は地下鉄赤坂駅から徒歩5〜6分のちょっと分かりづらい場所に在った。(おすすめ都内お店マップ参照)
入り口の上に『ジンギスカン北の国から』と書かれた木でできた大きな看板がライトに照らされている。赤坂という場所柄か英語で書かれた食べ放題メニューも店頭に置いてある。
ウッディーで清潔感のある佇まいに期待が持てる。
店の中に入るとまず目に飛び込んでくるのが大きな帆船の模型。店の奥にも帆船の模型が置いてある。
店内は4人掛けの白木のテーブル席が5つくらいもあっただろうか。20人も入れば満杯になってしまうくらいの大きさの店だ。
テーブルの真ん中に穴が空いていてその中にガスコンロが設置されている。そのコンロに穴なしのジンギスカン鍋を乗せてジンギスカンを焼くという方式だ。
時間は7時過ぎ。店には予約の先発隊であろう客が5人ほど入っていた。(最終的にはこのグループは10人以上の大所帯になっていた)
壁に掛かったメニューを見ると意外なことにここはジンギスカン食べ放題専門店ではなく、北海道の郷土料理なども出す居酒屋風メニューも取りそろえた店であった。
ジンギスカンは食べ放題のほかに肉と野菜のセットで1200円というメニューもある。肉の追加が650円、タマネギ、キャベツ、ピーマンの追加が200円。もやしの追加は300円となっている。あまり量を食べられなくなってきた我々にしてみたら、これは嬉しい。
30分以上遅れるであろう最高顧問を待つ間、生ビールとつまみに菜の花鰊を注文する。
この菜の花鰊が量も多く、味も美味しかった。
8時を回ったころに最高顧問がようやくやって来た。さっそくジンギスカンを注文。
以前有楽町のビアガーデンでジンギスカン食べ放題を注文したものの、二人で3人前しか食べられなかったことを思いだし、食べ放題ではなくセットを注文する。
肉は冷凍ロールラム。この肉は冷凍されたまま出てくる店も多いが、この店はきちんと解凍されている。解凍技術がいいのかやや黄色みがかった脂身と赤身の色が鮮やかで、美味しそうだ。一人前およそ100gくらい。
タレは味がしっかりしたジンギスのタレらしい濃いめの味。
野菜はもやしを中心にタマネギ、ピーマン、ニンジン、椎茸という構成。
この店での焼き方の推奨は鍋に野菜をこんもりと乗せて、その野菜の上に肉を乗せるという「蒸し焼き」方式。
これだと肉を直接鍋に乗せたときの「幸せの音」が弱いので我々としてはあまり好きではないが、親切に説明してくれる店長の手前、言われるがままにしてみた。
野菜の上でジブジブと肉が焼けていく。肉汁が染み出て野菜の間を通り鍋に流れる。ジュ〜〜〜〜という音とともに羊独特の甘い良い香りが漂い鼻腔をくすぐる。
タレにからめて一口。生ラムにはない、強い羊肉の香りが口の中に広がる。昔からのジンギスになれ親しんだ我々にはとても懐かしい香り。昔は強烈な羊肉の香りとともに厭な肉臭さやえぐみというものがあったのだが、ここの肉はそんな肉をフィルターに通して羊肉の香りだけを残したというような、臭みやえぐみを一切感じない。冷凍ロールラムとしてはかなり上質に分類される肉だ。
北海道生まれの最高顧問は子供時代がフラッシュバックされたみたいで、「懐かしいけれど上品な味だ」という意見。
それでも羊肉初心者が食べたらまだまだ羊臭いといわれるんじゃないかと、会長は心配になるのだけれど・・・。
店長とオーナーに話を伺った。
最初は浅草で帆船模型を置いたスナックをしていたのだが、食べ物屋に換えようかという話になり、店長が北海道出身だったことからジンギスカンをメインにする店になった。帆船模型はその時の店から持ってきたものだそうだ。
ランチタイムもやっており、定食物と豚丼をだしている(ジンギスカン定食は1000円、豚丼は破格の500円)。ランチタイムの客層はサラリーマン、OLがほとんどで、初めてジンギスカンを食べたであろうOLも美味しいとリピーターになってくれているそうだ。ジンギス信奉者を増やしてくれているということで、ジンギス啓蒙活動をメインとしている我々にとっては心強い。
夜の客層はやはりサラリーマンが多いが、赤坂という場所柄か北海道出身の議員さんや秘書の方も来るそうだ。インターネットを見て来るお客さんもけっこういるということで、我々としても嬉しい。
肉はオーストラリア産、タレは某有名メーカーのタレを基本にいろいろと店独自の味付けをしているとのこと。
ほとんどのお客さんが飲み放題・食べ放題コースを頼むのだが、90分という時間制限を設けてもきっちり守ってくれるお客さんはほとんどいないから、飲み放題・食べ放題・時間無制限で4500円というコースを作ろうかと考えていると店長は語ってくれた。
「肉の解凍が見事ですね」と水を向けると
特別なことはしていない。普通に解凍しているだけ、ということだった。
ただ極力解凍した肉をお客様に食べていただくようにしているが、たまに食べ放題で大人数で大量に食べるお客様だと用意した肉だけでは追いつかず、しかたなく凍ったママの肉を出さざるをえない時があると苦笑しながら話してくれた。
オープンして2年近くたつが、経営的には何とかやっていけてるということで一安心。(でも「なんとか」というのは多分謙遜の言葉だろう)
アットホームな雰囲気でジンギスカン以外の肴も旨く、ロールラムも美味しい。昔からジンギスカンに慣れ親しんだ人にとってはまさに聖地といってもいい店であろう。クセのない生ラムで羊肉好きになった人が次にチャレンジしてほしい店でもある。
ただ、ジンギスカン専門店でも高級店に位置する「寅々」が生肉、炭火のジンギスカンセットが1300円という値段設定であることを考えると、赤坂という場所とはいえ冷凍ラムロールのガス火でセット1200円はけっこう高い気がするがいかがなものか。食べ放題の客がメインとはいえ、それほど食べられない女性やお年寄りのためにも、肉と野菜のセットで1000円くらいになってくれたら嬉しい。
けっきょく我々はその後肉を2人前と野菜盛り合わせを1人前注文して、お腹がいっぱいになってこの店を出た。(やっぱりこの二人での食べ放題はもう無理と痛感)
最近ではラムロールのジンギスカン専門店が東京にはなかなかないので、こういう店も貴重である。これからも頑張って続けていって欲しい。