秋のキャンプでラムロースト! 2000年10月

 皆さんは2.5キロの肉の塊というと、いったいどのくらいの大きさを想像するだろうか。今、その肉の塊が目の前にあります。これが想像していたよりもけっこうでかい。手に持ってみるとズシリと重い。
 よく、ダイエットとかで2キロ痩せただの太っただのなんていいますが、実際にこの大きな肉の塊が自分の体にまとわりついていたらと思うとゾッとする。2キロ痩せるということがいかに大変なことなのか、この肉の塊を見ていると実感する。

ボリュームたっぷりの肉塊。 なぜこんな肉の塊が目の前にあるのか。
 それは10月の秋のキャンプにあたって、最高顧問のこの一言がもとであった。
「今回のキャンプはぜひ大きな肉を焼いて食べようよ」
 そこでさっそくいつものなみかたに「ラム肉ブロック(約2.5キロ)」を注文し、それが今到着したのである。
 肉の塊の料理というとまず思い浮かべるのが「ローストチキン」。
 これはクリスマス・シーズンにはお馴染み。腿のところをかぶりつけば美味い美味い。
 次に思いつくのが「ローストビーフ」。
 これはあまり家庭で作る料理ではない。店で買ってくるか、外で食べるか。外で食べるといっても家族で外食で……、というようなものではなく、主に立食パーティに行ったときなんかにスパゲッティやサラダなんかとは区別され、高い帽子のシェフがついていて、一人ひとりに切り分けてくれたりなんかする、その立食パーティの格を左右する一品になっている。
 大抵立食パーティが始まるとそこには長蛇の列ができていて、お皿を持ってその列に並ぶんだけど、どうもこれが気恥ずかしい。しかも、自分の順番が来ると申し訳なさそうにシェフにお皿を差し出し、シェフも薄く薄〜く肉を切り、うやうやしく1枚だけお皿にのせてくれる。とてももう1枚欲しいとねだるような雰囲気ではない。寂しくグレービーソース何ぞというものをその薄い肉にかけ、ホースラディッシュとともに食べるんだけど、「労多くして益少なし」とはこの事か。いつも寂しい気持ちにさせられる。
ラムのブロック2.5kg。 あぁ、もっと肉が食べたい。できればあんなにうやうやしくされるのではなく、いっそのことあの肉を塊ごとかぶりつきたい………(なんだか書いていて興奮してきてしまったぞ)
 ということで、そんな恨みを晴らすべく、今回のキャンプではこの肉の塊を「ラムロースト」にすることに決定した。
 
 まずは栃木のジャスコで食料の買い出し。
 市販のローストビーフ用のソースを売っていないかと探したけれど、そんなものは売っていなかった。(やはりローストビーフは自分で作るものではないのか……)
 しかし肉売り場に出来上がったローストビーフを発見。ソースもついている。そこでスーパーのおばちゃんにこのソースだけ売ってくれないかと頼むと、これは売り物ではない、との返事。
 我々のあまりの落胆ぶりにおばちゃんは気の毒に思ったのだろう。
「分けてあげるから持ってきな」と嬉しいことをいってくれた。そしておばちゃんは小袋入りのそのソースを大きな袋一杯にくれたのである。ざっと小袋30袋以上。
 栃木のおばちゃんはなんていい人なんだ。我々はそのおばちゃんの手をとらんばかりに感謝してそのスーパーをあとにした。(ジャスコのおばちゃんどうもありがとう。ちなみにこのジャスコでは「ソラチ」のジンギスカンのタレを売っていたので、今回ジンギスカンの予定はないもののストックとして買っておいた)

ていねいに筋や脂肪を取り除く。 キャンプ地に到着してさっそく夕食の支度。メニューは「ラムロースト」に「クリームシチュー」。
 レシピを見ると肉は筋と余分な脂肪をとるようにというこのなので、さっそく包丁を手に最高顧問が筋取り。肉の中の方にまで筋がはいっているのでなかなか取りにくく悪戦苦闘。結局肉を2つの塊に分けて調理することにした。
 それでも一向に埒が明かない不器用な最高顧問の手つきに、会長が見かねてバトンタッチ。
 なんとか筋と余分な脂肪(500g近くあっただろうか)をとり、肉に塩コショウとニンニクをすり込んで串に刺した。
七輪でじっくりとあぶり焼き。 今回はキャンプ地のことゆえオーブンになるようなものもないので、ケバブのように炭火でまわりから焼いて、削いでは食べ削いでは食べ方式にすることにした。七輪の上に肉をかざし、くるくると回していく。しだいに炭の遠赤外線で肉が焼け、脂がポタポタと垂れてくる。
 垂れた脂が炭に落ち、ジュっという音をたてて煙となって肉にたちのぼり、肉に香ばしい香りをつけていく。
 いい色に焼き上がってきた。
いい具合に焼けてきました。 包丁で焼けたまわりを削ぎ、スーパーでもらったソースをつけて食べてみる。
 
 う・美味い!!
 
 肉を口に入れた瞬間にスモーキーな香りが鼻孔をくすぐる。余分な脂肪は落ちているのでしつこくなく、噛みしめると羊の香りがほのかに鼻を通り抜け、ソースの甘みと肉本来の甘味がみごとに調和している。
 もっと口いっぱいに食べたい衝動に駆られるものの、焼ける肉の量は限られており、食べたそうにこちらを注目している目はあまりにも多い。
ナイフで削いで……。 まずはお腹を空かせた子供たちに食べてもらい、それから大人たちに振る舞われた。味は大好評であった。
 ただし、肉ひと塊を焼くのに、こういう炙り焼きではかなり時間がかかる。第2弾を焼こうかという時にはもうみんなお腹が一杯になってしまっていた。
ラムシャブもGOOD! また、今回はラムシャブにも挑戦した。薄く切ったラム肉をさっと湯通しして関西方面で有名な「旭ポンズ」でいただく。あっさりした中にもほのかな羊の味わいがあって、う〜ん、美味。本当になみかたさんの生ラムは上品な味わいだ。山間のキャンプ地の秋の夜は冷え込むのも早く、七輪を囲む我々の吐く息もすでに白い。そんな中、やさしいラムのかおりが我々の体を温めてくれたのであった。
残った肉はジンギスカン。 ローストで残ったブロック肉1キロ弱は翌日、薄く切ってジンギスカンにして美味しくいただいた。タレは前日ちょうど「ソラチ」のジンタレを買ってあったのでそれを使ってみたのだが、これがいつもの「ベル」と違ってフルーティでまろやかな味わい。美味しいタレだった。
 
 今回のチャレンジ「ラムロースト」は大好評であった。肉の塊を思い切り食べたいという願望も叶えることができた。
 さらに思いもかけず栃木のおばちゃんの人情にも触れられて、とても楽しいキャンプであった。



勘違いのジンギスカレー 2001年1月 (文責/会長・野村)

【思い込み】(おもいこみ)
 辞書で調べると
 (1)そうだとばかり信じきっていること。
 (2)それ以外にはないと固く心に決めること。(大辞林第二版より)と出ている。
 「思い込みの強い男」などという例がついている。
 今回の会長はまさに「思い込みの強い男」であった……。
 
ジンギスカンカレーのパッケージ。 ことの始まりは正月休み明けの会社でのこと。
 札幌の実家に帰省していた会社の女の子から「食べてください」と貰ったお土産にあった。
 そのお土産の名前は『ジンギスカンカレー』。赤い紙袋に大きく商品名と羊の絵が描いてある。
 それを見た瞬間、すっかりカレー味のジンギスカンと思ってしまった。袋を押してみるとクニュクニュとして、中にジンギスカンの肉が入っているような雰囲気。
 まさに【思い込み】……。
 
 カレー味のジンギスカンかぁ……。まだ食べたことがないけど美味しそうだなぁ。
 最高顧問はまた「邪道!」なんて言うだろうけど、これはこれで有りだよな。今までとちょっと毛色が変わっていて珍しいし、21世紀一発目のジンギスはカレー味から始めるか。
 と、想像は膨らむばかり。
 嬉しさのあまり東京ジンギス倶楽部の掲示板にも書き込みをし、東洋肉店さんから「同じようなカレー風味の羊肉がうちにもあります」なんていう返事を読んで、ますます気持ちは舞い上がってしまった。
 さっそく家に持って帰り、愚妻に『ジンギスカンカレー』を誇らしげに差しだして「今週末は我が家でジンギスパーティを開くから」と鼻息も荒く宣言。

 しかし、そのパッケージをしげしげと見ていた愚妻が意外なことをつぶやいた。
「これってレトルトのカレーじゃないの?」

 【晴天の霹靂】(せいてんのへきれき)
 晴れているときに突然鳴りひびく雷鳴。突然の事件、または、不意打ちをくらうこと。(昭分社:故事ことわざ辞典より)
 
 まさにうかれ気分に冷水を浴びせる一言であった。
「そんなバカな……」といいつつも、思い当たる節がひとつ、ふたつ。
 そういえばパッケージに「冷蔵して」ではなく「冷暗所に保存」と書いてあった。賞味期限も6ヶ月先になっていた。ずいぶん日もちのするジンギスカンだと思った覚えが。
 慌てて袋を開けてみる。中に入っていたのは…………まぎれもない白いレトルトの袋であった。
 
 【青菜に塩】(あおなにしお)
 青菜に塩をかけるとしおれることから、力がなくなってぐったりとなるようすのたとえ。(昭分社:故事ことわざ辞典より)
 
 その場にへたりこむ会長を、なぜか勝ち誇ったように見下ろす愚妻。
 彼女は相変わらずジンギスカンがあまり好きではない……。
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
要するに羊肉入りのカレー。 後日その『ジンギスカンカレー』を食べてみた。
 カレーはかなり焦げ茶色をしていて、粘着性が高く、ご飯にかけるとトローリというよりもボタボタっという感じで袋から出てくる。
 匂いはスパイスの効いた本格的な感じで美味しそうだ。
 ジンギスカンカレーというからにはまずは肉から味わう。肉は2センチ角くらいのものが10切れほど入っていた。
 その一つをスプーンですくい、口に入れる。ホロホロと繊維状に肉が崩れていく。
 羊肉の香りを探し求めて何度も噛みしめてみる。しかしカレーの味が強いせいかほんのりと感じるかな、という程度。
 例えるならば、渋谷の109の前で耳を澄ましたら、500メートル先にいる羊の鳴き声が、雑踏の中でかすかに聞こえてきたという感じだろうか。
 カレーは(辛口)ということだったが、実際にはほどよい辛さで、スパイスの香りも効いた本格カレーで十分美味しいものであった。
『ジンギスカンカレー』という名前だったからジンギスカンの肉を想像してしまったが、『マトンカレー』と言われれば、十分になっとくする。(ただ、もうちょっと羊肉の香りがほしかったが)
 
 今回は、北海道からわざわざお土産を持ってきて、話題を提供してくれた林さんに感謝。
 そして今年は
 【早とちり】(はやとちり)
 早合点して間違えること。(例)「そそっかしくて__ばかりしている」(大辞林第二版より)
 というようなことを戒めようと心に誓う会長であった。



「金太郎」で2001年ミニオフ新年会! 2001年1月

 1月某日、友人のオグサク君から電話があった。
「みんながお薦めの新橋の『金太郎』に行ってみたいんだけど、連れてってくれない?」
 彼はそれほどジンギスカンが好きな男ではない。まぁ、あれば食べてもいいなといった程度にジンギスカンを認識している男である。
 これはいったいどういうことだろう……? と我が耳を疑ったが、とりあえずセッティングすると約束して電話を切った。
 次の日、lamuo男爵から電話がかかってきた。
「久しぶりに『金太郎』に行かない?」
 実はオグサク君とlamuo男爵は幼稚園から35年間一緒という親友同士。
「オグサク君からも昨日『金太郎』に行きたいっていう電話があったけど……」と話すと、lamuo男爵は知らないという返事。
 以心伝心を地でいくような二人の関係に不思議な縁(えにし)を感じる会長であった。「それじゃ東京ジンギス倶楽部新年会ということにして、ついでに最高顧問の出産祝いも兼ねたものにしようよ」と提案すると、lamuo男爵もそれはいいというので話はとんとん拍子にまとまり、さっそく最高顧問に連絡をして、特別会員のTamm氏も呼び、週末に行う手はずを調えた。
 lamuo男爵に段取りを連絡すると、予約ができるなら誘いたい人がいるという。lamuo男爵が起ち上げた、沖縄好きの人の掲示板の常連さんを呼びたいというのだ。
 本来人見知りの激しい我々東京ジンギス倶楽部幹部連。去年の春に一度お花見ジンギスカンを企画したものの参加者が現れず、それ以来オフ会はしていなかったのだが、ここはlamuo男爵の顔をたてて、急遽『東京ジンギス倶楽部新年会&沖縄トピックミニオフ。ついでに最高顧問出産おめでとう会』と趣旨を改めて行うことになった。
 
金太郎のテーブル席。 『金太郎』は早い時間なら予約可能ということで、金曜日の夜7時に現地集合。
 会長が7時に『金太郎』にいくと、気合いの入っているTamm氏はすでにビールを飲んでいた。
 店は以前来たときにはカウンターだけだったが、店内に入ってすぐのところに6〜7人座れるテーブルができていた。おやじさんに聞くとカウンターを短くしてテーブルにしたとのこと。こういう宴会のときにはみんなでワイワイ話せるのでありがたい。
 ほどなくオグサク君もやって来てビールを飲んでいるとlamuo男爵が沖縄トピの二人と共に登場。まずは自己紹介。
 オフ会初体験の我々は相手の名前をハンドルネームでしか知らない。来てくれたのはgafRRさん(以後ここではガフさん)という男性とHappymac2001さん(以後ここではハッピーさん)という名前の女性。二人は昔からの知り合いということであった。
 ところがオフ会に慣れていない会長はどうもハンドルネームで呼ぶのが気恥ずかしくて、結局本名で呼ばせてもらうことにした。
 仕事で遅れた最高顧問も登場して改めてみんなで乾杯。
 話を聞くとハッピーさんは学校の後輩だということがわかり、一気に打ち解けムードに……。ガフさんはとても食いしん坊な人で、最近行った沖縄旅行で一日5食くらい食べていたといいながら、そのときの沖縄の食べ物の写真を見せてくれた。
 我々も9月に行った沖縄無人島キャンプの話で大いに盛り上がる。
 ガフさんの奥さんのキジムナーさんも来てくれて、宴会は最高潮に。

あらかた食べ終わった後のなべ。『金太郎』のジンギスカンは相変わらず美味い。以前は細かくちぎれたような肉片がけっこう入っていたが、今回は肉の大きさのばらつきもなくたいへんに満足がいくものだった。
 ジンギスカンを初めて食べたというハッピーさんもキジムナーさんも「ジンギスカンってこんなに美味しいものだったんですね」と感激の面持ち。
 オグサク君も「『まえだや』よりもこっちの方が好きかもしれない」とボソッとつぶやいていた。店もたいへんに繁盛していて、入りきれなくて断るお客さんもあるほど。ジンギスカン応援隊の我々としても嬉しいことである。
上がフランス,下が石垣産。『金太郎』のおやじさんがサービスにとキムチやらキノコ焼きなどを出してくれた。我々の沖縄話を聞いていたのだろうか、「キノコ焼きにこの塩を付けてみて」と沖縄は石垣の塩とフランス産の塩を出してくれた。その他に、「これも付けて食べると美味いから」とオリーブオイルも。
 石垣の塩は結晶の粒が大きくて海のミネラルたっぷりといった感じ。フランスの塩は岩塩のせいかやや茶色っぽい。2つを食べ比べてみる。…………結果は岩塩となって熟成されたせいだろうか、フランスの塩の方が味に深みと旨味があって美味しかった。
 ジンギスカンでひとしきりお腹がいっぱいになったあと、この店自慢の「ねこ飯」を注文する。ねっとりした味わいの穀物は、噛めば噛むほど甘味が増していく。その甘味とおかかの香りに醤油の香ばしさが加わって、お腹がいっぱいでもするすると胃に入っていってしまう。大食漢のTamm氏は本当にお代わりをしたので一同驚いた。ところがお店のご飯は底をついていたらしく、お店の人が近くのお店かなにかで調達してきた様子。恐縮至極のお代わりメシであった。初めて食べる沖縄トピの人たちもお腹がいっぱいといいながら「美味い美味い」と残さず食べてしまった。
 
沖縄では定番の泡盛までいただく。 おやじさんは沖縄の泡盛まで出してくれて我々はさらに酩酊の度を深めていき、ふと気がつくと、時間はすでに12時をまわっている。北は北海道のジンギスカンの話、南は沖縄の話と北と南の両極端の話に花が咲いて、なんとここに5時間以上も長居をしてしまった。終電も近いのであわててお勘定をお願いする。
 あまりの長居におやじさんに謝ったら「ぜんぜん大丈夫。気にしないで」と優しい言葉をかけてもらった。
 オグサク君はそんな優しいおやじさんの応対にまた「気に入った」とつぶやいていた。ジンギスカンの味だけではなく、おやじさんの人柄にも惚れたようだ。ちなみに彼は40に手が届こうという年齢で、いまだ独身である。
 
 今回の『東京ジンギス倶楽部新年会&沖縄トピックミニオフ。ついでに最高顧問出産おめでとう会』は大成功であった。今回の成功に気を良くした我々は、もう一度春に『お花見ジンギスオフ会』を企画してもいいかなぁと心が動いている。


ついに禁断の秘肉に挑む 2001年2月

 ミルクラム。
 なんとも怪しげで魅惑的なその言葉の響き……。
 しかしてその実態は、生後2週間のまだミルクしか飲んでいない小羊のことをいうらしい。
 2月に「肉の東洋」さんから東ジンの掲示板へミルクラム販売の書き込みがあり、その存在をはじめて知った。しかし羊臭くないから東ジンさんには合わないだろうという書き込みに、チャレンジ精神がむくむくと頭をもたげてきた。さらに限定5名様限りというのも心をそそられる。1月の半ばに最高顧問に男の子が生まれたので、その出産祝いのパーティもしてあげなくちゃとの目論みもある。
 食に関してわりと保守的な最高顧問に比べて、会長は探求心旺盛というか、何にでも挑戦してはわりと痛い目を見ることが多い。
 しかし今回は羊である。例え失敗したとしても不味いということはなさそうだ。
 そこでさっそく東洋さんに買いたいむねをメールで伝えた。
 帰ってきた返事が、何とすでに40名を越える応募があるとのこと。果たして見事そのミルクラムというものを食べることができるのか、心待ちしながら連絡を待った。
 2月の半ば、東洋さんのHPにて当選者発表というメールが届き、ドキドキしながらアクセスすると……ありましたありました。当選者5名の中に燦然と輝く会長の名前が。最終的に51名の応募の中から選ばれたらしい。
 料金は約1キロで2500円。それに送料、消費税などが付いて全部で3875円。当選お礼のメールとともに週末に届けてくれるようにと東洋さんにお願いした。
 
 さっそく最高顧問に当選の連絡。
会長「ミルクラムが当たったよ。最高顧問の出産祝いを兼ねて、そこのベランダで七輪で焼いて食べようよ」
最高顧問「我が家はジンギス禁止!!」
会「ジンギスじゃなくて塩コショウだけで焼くと美味しいらしいよ」
最「でも脂が落ちると煙がすごいだろうからなぁ」
会「大丈夫。写真で見るかぎりミラクルラム(ミルクラムのこと:最高顧問注)は脂なんかほとんどなかったよ」(実は写真ではそんなことはわからない)
最「部屋に匂いがつかないかなぁ?」
会「ほとんど羊臭くないらしいし、窓を閉めちゃえば煙は入ってこないよ」
 というやりとりの末、週末に最高顧問の家でミラクルラム試食会&出産祝いが行われることに決定した。残念ながらlamuo男爵は週末に法事があるということで今回は欠席。
 結局会長家族と最高顧問の家族、大人4人に子供3.5人という人数。肉は骨付きで1キロくらいだから、試食会にはちょうどいい分量ではないか。
(羊肉が苦手な愚妻のために最高顧問の奥方はさらに牛肉を用意してくれていた。感謝!)
 
ミルクラムのモモとあばら肉 週末、ミラクルラムが送られてきた。さっそく箱を開けると、確かに生後2週間を思わせる小さな足がモモからスネの辺りまで1本に、あばらの辺りの骨付き肉が少し。それに食べ比べ用の普通のラム肉が一切れ入っていた。この足がけっこう生々しい。愚妻は見るなり「ウゲッ」といって触ろうともしない。
 例えるならば昔理科の時間にやったカエルの解剖で、皮を剥いたカエルの足を何十倍にも大きくしたというところだろうか。脂は少なく、色はほんのりピンク色をしている。
 
 夕方最高顧問の家に集合。気合いの入っている最高顧問はすでにベランダで七輪に火を起こして待っていた。
なかなか生々しい さっそく肉の解体作業にはいる。足は膝の関節の辺りを無理やり曲げてはずす。肉は料理鋏で切っていく。膝の関節を外すときにブキバキと嫌な音がして、ちょっぴり仏心が走る。申し訳ないと心の中で小羊に手を合わせた。
 モモとスネが分かれた。あばらの辺りは小さくスライスして焼き肉風に。足はキャンプの時のようにローストラム風にして焼くことにした。
 塩はハーブ入りのクレージーソルトというものを用意。コショウは粒の黒胡椒をガリガリとひいて味付け。その他にジンたれ、ローストビーフソースも用意した。
 
さっそく七輪で…… まずは焼き肉風のスライスを網焼き。肉の焼ける香ばしい薫りが漂う。脂は少ないものの、けっこう煙が出て部屋の中に進入してくる。慌てて窓を閉めたがどこからか入ってきて、たちまち部屋の中は肉の焼ける匂いが充満してしまった。
「もういいや……」と最高顧問がぼそりとつぶやく。諦めがいいのが最高顧問の取り柄でもある。
 焼けた肉を一口食べてみる。ほとんど羊肉の匂いがしないとあったが、ほのかにラムの香りが口の中に拡がる。肉の柔らかさは特筆もの。高級和牛のように溶けるような柔らかさではなく、噛みしめる喜びを備えつつ、噛んだときの弾力があくまでもソフトといった感じである。
 さらにもう一切れ食べようとする会長と最高顧問が痛い視線を感じて横を見ると、子供たちがガラス越しに羨ましそうにこちらを見ている。慌てて焼けた肉を子供たちに手渡した。羊肉好きの子供たちは我先にとミラクルラムを頬張る。スライスしたラムはほとんど子供たちに食べられてしまった。子供たちは塩コショウで食べるよりも、慣れ親しんだジンたれで食べるのが好みのようであった。
モモ肉をじっくりと 次に普通のラム肉を焼いて食べ比べてみる。羊肉の香りも違うが、やはりなんといっても肉の柔らかさが圧倒的に違う。ただ、これも好き好きで、噛みごたえがあったほうがいいという人もいるだろう。肉好きの会長としてはたまにはこの肉もいいけれど、普段常食にするならばラム肉に軍配を上げる。
 しかしあまり羊肉の好きではない会長の愚妻は、このミルクラムは美味しいといって、いつも以上に食べていた。
うれしそうに頬ばる罰当たりな会長  モモ肉ををロースト風に焼いて、包丁でこそげながら食べる。ほとんど発達していないモモの肉は、味も淡泊なのでジンたれのような濃い味のソースには負けてしまう。やはり塩コショウのみが一番美味しい味付けだと思う。(塩もあまり強くふらないほうがいいかも)
 
 ビールを飲み、肉をつつき、話に花を咲かせる。気がつけば最高顧問の子供も産まれて2週間ほどであった。そう考えるとまたまたみんなに仏心が甦り、若くして亡くなった小羊に合掌。
 用意した野菜、おにぎり、ミルクラム、それに羊肉が苦手な愚妻のために最高顧問の奥方が買っておいてくれた牛焼き肉も食べつくし、大満足の宴会であった。
 
 後日、東洋さんのメールマガジンで、今回のミルクラムを好評につき一頭単位で取り扱うという記事を読んだ。1キロくらいならば気軽に頼めるが、1頭(約5キロちょっとらしい)となるとおいそれとは頼めない。また今回のように人数限定で販売するとか、何人かの注文がまとまった時点で販売するなどの方法もとってほしいものである。

最高顧問記:会長は途中からミルクラムをミラクルラムと幾度となく書き間違えている。もしかすると羊の食べ過ぎでクロイツフェルト・ヤコブ病にでもかかり、脳が海綿化してきているのかも知れない。同じ羊好きとしてたいへん心配である。今後会長の行動・言動に不審な点があればこの場で報告していきたい。


レアアイテム、羊ジャーキー 2001年4月

「友遠方より『ジンギスカン・ジャーキー』と共に来る。また楽しからずや」
(今回はNHKの『プロジェクトX』の田口トモロヲをイメージしながらお読みください)

 4月のとある日曜日、「東京ジンギスクラブ」北海道支部長のマナブが関西への出張帰りに東京に立ち寄ることになった。
 この男、本場北海道は札幌に暮らし、東ジンの北海道支部長を名のっていながら、なかなか北海道のジンギス情報を送ってこない怠慢な男であった。
 突然の訪問とはいえ、久しぶりに会う友との語らいを楽しみに、最高顧問と会長は集合場所の居酒屋へと急いだ。
「道を間違えた!」といいながらマナブが慌てて店に駆け込んだのは、2人から遅れること30分くらいしてからであった。
 マナブは持ってきた鞄の中をゴソゴソとかき回しながらこう言った。

「2人にお土産があるんだわ」 
 鞄から出てきたものは小さなビニールパックだった。
 そのパックにはこう書かれていた。
 
『ジンギスカン・ジャーキー』

「サービスエリアでたまに目にしてたんだけど、食べたことはなくってさ、東京に来るときに買っていこうと思っていつものサービスエリアに寄ったらもうなかったんだわ。いやぁ、あっちこっち探してようやく見つけたんだ。」

 マナブの気持ちに2人は頭をたれるばかりだった。

 最高顧問はさっそく後日食べたようだが、会長はもったいなくてなかなか食べられなかった。
 5月のある日、東ジン総裁のlamuo男爵が会長の家に遊びに来た。
 会長が自慢気に『ジンギスカン・ジャーキー』の話をすると、「それはすぐに食べなければ!!」と総裁が叫んだ。
 
 パックの袋を開けた。
 醤油系だろうか……。ビーフジャーキーっぽいスパイシーな香りがあたりに漂った。
 一口食べてみた。
「意外と柔らかい!」 と会長が叫んだ。
 噛みしめると肉はあっさりとちぎれ、醤油ベースのスパイシーなビーフジャーキー
のタレの味に羊肉の香りが混ざり、口の中に広がった。
「これ、美味いなぁ!」
 総裁が感心したようにつぶやいた。  
 用意しておいたビールがみるみる無くなっていった。
『ジンギスカン・ジャーキー』もアッというまに無くなってしまった。
 2人で遠い北海道にいるマナブに感謝の合掌をした。

「マナブ、ありがとう。またよろしく!」

 会長がそっと北海道に向かってささやいた。
 
 
(できればここからは中島みゆきの『ヘッドライト・テールライト』を聞きながらお読みください。)
 小里マナブは今も仕事の傍ら「東京ジンギス倶楽部」北海道支部長を続けている。
 北海道では次々と新しい生ラムのジンギスカン専門店がオープンしていた。
 しかし、年のせいか最近めっきりジンギスカンを食べる機会が減ってしまったマナブは、まだ北海道情報を東ジンに報告するのをためらっている。
 
 最高顧問はプロバイダーの変更を期に「東京ジンギス倶楽部」のホームページを大幅にリニューアルしようと画策している。そのためにも北海道情報が喉から手が出るほどほしいのだが、北海道からの連絡は今のところまだ無い。
 
 会長はあの『ジンギスカン・ジャーキー』の味が忘れられず、都内のデパートなどを何軒か探し歩いてみたが、見つからなかった。
 
 総裁は今年も沖縄無人島キャンプの計画に没頭していて、ジンギスカンどころではなくなっていた。
 
 かつてジンギスカンを愛する男達が見た夢は、それぞれが、それぞれの思いを胸にしながら、21世紀へと紡いでいった……。
  
 終
 
 
 次回はマナブがようやく送ってくれた情報を頼りに、北海道産の生ラムを札幌に電話で注文した顛末をお送りします。
 はたして北海道産の生ラムはオーストラリア産などの輸入羊肉よりも高いのか、味の違いはあるのか?
 どうぞお楽しみに!!


幻の道産子ジンギス、ついに食す! 2001年5月

 4月に関西出張のついでに東京に寄ってくれた北海道支部長のマナブが、その時にある貴重な情報を教えてくれた。
 去年の3月に送ってくれたジンギス肉が美味かった(ジンギス日記2000年4月参照)という話をしていたときのこと。マナブ曰く
「その店の前をこの前車で通ったときに、ちょっと寄ってそこのおやじさんと話したら、東京にジンギスカンのHPがあるみたいだといって、東京ジンギス倶楽部のことを知ってたよ。肉は北海道産で通販もしてくれるって言ってたなぁ……」
 目を丸くして驚く会長と最高顧問。
 今までいろいろと通販でジンギス肉を頼んで食べてきたけれど、羊の香りが残り、しかも柔らかくジンギスのたれによく合う肉は、あの肉が最高だったと常々話していた我々はさっそくマナブにその店の電話番号などを調べて報告するように依頼した。
 ほどなくマナブから店の名前と電話番号を知らせる連絡が入った。『肉のヨシダ』というごく普通の街のお肉やさんなのだが通販で肉を送ってくれるとのこと。(「肉やタレを手に入れる」参照)
 今年のゴールデンウィークは友人一同が集って三浦半島でフィッシング・キャンプをする予定だったので、そのキャンプに合わせて最高顧問が『肉のヨシダ』に肉を注文した。
 なんと驚いたことに北海道産の生ラムが100g200円という激安値段とのこと。本当にそんな値段で北海道産の生ラムが手に入るのかと、いつもお世話になっている『羊肉のなみかた』のおやじさんにメールで聞いてみたところ、それはあるだろう……という返事。これは楽しみだ。

 ところが注文した肉が到着し、明日はキャンプという一番ワクワクしているとき、またしても最高顧問に不幸が……。
 最高顧問の次女が肺炎にかかり緊急入院。あえなく最高顧問はドタキャンとなってしまった。(いつものことではあるけれど……ホントについてない男である)
 
 キャンプ当日。海釣りの釣果は大漁。夕餉の食卓には釣ってきた大量の魚の刺し身や空揚げと共に、北海道直送の生ラムジンギスが彩りを添えた。
 
 いつもの穴空きジンギス鍋を七輪にかけて待つことしばし。鍋が十分に熱くなったところでラードを乗せる。みるみるラードが溶けて穴からも油がしたたり落ちる。
 さっそく待望の北海道産の生ラムを鍋に乗せる。幸せの音が夜のとばりの中に響く。焼けた肉をタレに浸けて頬張る。あっ、今回のジンギスのタレはいつもの定番のベルのオレンジラベルね。
 柔らかい。でも、ただ柔らかいだけではなく真のほうに弾力があり、かみ切る直前に歯をぐっと押し戻す。この弾力が気持ちがいい。さらにこの押し戻されるときに肉汁がジュワッと口の中に溢れてくる。羊の香りは十分に残しつつその香りがいつまでも口中に残ることがなく、すっと消えていく。
 どんどん鍋を肉にのせる。余分な脂が鍋の穴から炭の上に落ちる。落ちた油はジュッという音を立てて煙となって肉をスモークする。香ばしさが加わりさらに肉が美味しくなる。
 そうそう、釣ってきた魚も食べなくちゃ。
 本日釣ってきた魚はキスにマゴチ。キスの刺し身は新鮮で(当たり前)さっぱりとしてじつに美味い。口の中がさっぱりとしたところで、また肉を頬張る。う〜〜〜ん、美味い。ビールもどんどん進む。
 だんだんいい気持ちになってくる。美味しい食べ物と美味しいお酒。今日の釣果を自慢しあう親しい友たちとの語らい。聞こえてくる潮騒の音。ドタキャンしてしまった最高顧問がじつにかわいそうだ。
最高顧問のためにもこの場を楽しんでおこう。

 語らいは未明まで続いていくのであった。



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